2012年5月5日土曜日

ヴィリー・マルクセン「史的および神学的問題としてのイエスの復活」(村上伸訳『イエスの復活の意味』新教出版社、1974年所収)

マルクセンはブルトマン学派の神学者。史的な意味でのイエスの復活は否定するが、初代教会の「ケリュグマ(宣教)」のなかへのイエスの復活は肯定する、という趣旨らしい。しかし、論文の末尾で著者が「私が今日、―説教のなかで―この宣教(ケリュグマ)によって動かされるとするならば、…中略…その時に私にとって、終末的なものの先取りが起こるのである」とするとき、史実としての真偽が問えない「復活」の「宣教」は、ちょうどメタ倫理学上の「情動主義」における、倫理的言明の意義(「非認知説」として倫理的言明は真偽という性格をもたないが他者の情動にのみ作用しうるという)に似通った性格を持っているようにも思われる…。