2013年5月28日火曜日

A.G.Sertillanges,O.P.(trenslated by J.V.Schall),The Intellecutual Life Its Spirit,Conditions,Methods,The Catholic University of America Press,1998.

  ドミニコ会士セルティヤンジュ(1863~1948)の著名な著作(渡辺昇一氏の『知的生活の方法』にも言及がある)。大変な名著の一つであろう。キリスト教文化・信仰が背景になっているので、そうした背景を持たない人にはややわかりづらい点もあろうが、研究者として生きてゆく精神的支えとなる本である。

    研究生活一般に関するアドバイス(たとえば他人からの厳しい批判をどう受け止めるべきかとか)のみならず、そもそも研究生活というものの意味をキリスト教的な生き方の内に位置付けている点が素晴らしいと思う。前者に関しては「真のインテリとは忍耐する者のことである」(p.226)と説くあたり、襟を正させられるものがある。後者に関して、この本は、あくまでプロの研究者としての意識を持つことを厳しく説きながらも、しかしたとい目立った社会的成功のない人生であっても、神と信仰の内にかかわることを全うするならば、人生の究極目的は満たされたのであり、成功した人生であると説いてもいるあたりには慰められるものがある。

 さらに、「第一原理」を拒む今日の諸学がその根源において総崩れの状態に陥りつつあり、これを克服するためには、諸学の学者も、学の究極の統一原理を与える神学をある程度学ばねばならない(具体的に1週4~6時間を4~6年間学ぶことを勧めている!)ことを説いているあたりは慧眼であろう(p.109)。

 またトマス・アクィナスの『兄弟ヨハネスへの学習法に関する訓戒の手紙』を深く解説している個所もあり、興味深い。