本書はM.D.シュニュ、I.コンガール、スキレベークス、ド・リュバック、ラーナー、ロナーガン、バルタザール、H.キュンク、ヴォイティワ(ヨハネ・パウロ2世)、ラッツィンガー(ベネディクト16世)と、第二バチカン公会議に直接・間接に影響を及ぼしたとされる、いわゆる「新神学」周辺の著者を扱っている。
訳文はやや読みにくい箇所もあるように思うが、それぞれの著者の特徴的議論について簡潔に知ることのできる本書は非常に貴重であるように思う。
全体として、公会議前のトマス主義に基づく「新スコラ学」の、非歴史的・形而学的神学から、公会議後の歴史的・聖書的神学へとカトリック神学の方向転換がなされたという思想史観に基づいて論述がなされている。
私は本書の論述を総括的に論評することは出来ないが、ただ一つ違和感を感じるのは、著者が批判的に論じる公会議前の「新スコラ学」神学が何であるのかという点である。具体的にはガリグ=ラグランジュが槍玉に挙げられて常に批判されているが(ドミニコ会士である著者の近親憎悪?なのであろうか)、「新スコラ学」内部の多様性についてはどう考えるべきだろうか。マリタン、ジルソン、メスナーといった「トミスト」の哲学者や倫理学者も十把ひとからげに「新スコラ学」という《過去の遺物》に含めるという訳ではなさそうだが、どうも、第二バチカン公会議関係の論述には、旧世代をひとくくりにしたり、今では50年前になる公会議での《解放》体験で立ち止まってしまう傾向があるようにも、私の世代には感じられる(ただし本書は公会議後の流れもある程度述べている)。
いずれにせよ、これらの著者について、また「新スコラ学」についてもまだ研究途上にあるゆえ、これ以上コメントは差し控えたいし、簡潔な見取り図を与えてくれる本書には感謝したい。
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