著名なベルクソン研究者であり、大阪大学医学部「医学概論」担当教授であった著者による『医学概論』三部作の第二部である。
人間の身体的生命の本質を、科学的知見を踏まえつつ、「気」という能動的原理と「体」という受動的原理の「二元的一元性」において捉えるのみならず、「魂の不滅」についていわば終末論的に考察している。
「一つ一つの精神は地上において身体を通じてのみ自己を形成するものであり、身体を離れてはそれ以上自己を形成発展させることはできない。しかしそれはより優れた精神によって自己を高めることができると考えてはどうであろうか。それを許すとすれば、いかなる精神界が生まれるかは、いかなる精神を人類がこの世において生み出すかという点にかかっており、そこにこそ人間存在の目的と、精神的創造の喜びがあると考えてはどうだろうか。宇宙は何時かは永遠の死に帰るであろう。しかしその時こそ精神の国が物質の国を超えて独立するときであり、しかもどのような精神の国が誕生するかは一に懸って現在の生命の精神的自己創造にあると考えてはどうであろうか。」(284頁)
そのほか、「精神的環境とは、肉体と分離した精神があると考える場合、そのような魂の間に成り立つ一つの社会である。」(120頁)とする精神的環境についての議論、死者の追憶の意義(253頁)、ハンス・ドリューシュの生気論への評価(50頁)など、多くの非常に興味深い議論がみられる。
正直なところ、現在の日本にこれだけの哲学者が存在するだろうか…。
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