2013年1月5日土曜日

尹載善『韓国の軍隊 徴兵制は社会に何をもたらしているか』中公新書、2004年

 いろいろの意味で多くを考えさえられた一冊である。まず、日本と韓国の第二次大戦後の歩みの違い。韓国の軍事独裁政権や徴兵制に伴う軍事文化を無視しては韓国の現代史を理解できないのであろう。しかし私が特に興味を持ったのは、韓国軍内での宗教活動についての論述である。

「日曜日の午前、すべての兵士に宗教活動の時間が与えられる。よりよい軍隊生活のために、一人一宗教を持つことになっている。大部分の兵士は、日曜日の午前には宗教活動に参加する。つらくて疲れる軍隊生活のなかで、より安定した生活ができるよう支えるのが宗教活動である。宗教はもちろん自由で、プロテスタント、カトリック、仏教等、自分の望む宗教活動ができるようになっている。」(177頁、下線は引用者による)とある。

私は実は大学院時代、著者(尹先生)と同じ研究室に属していたが、ここまで詳しく韓国軍や著者の事情について伺いそびれていた。神学校も卒業し、今は牧師としても活躍される著者によると、韓国で今や国民の3割以上がキリスト信者になっている背景には、韓国の徴兵制に伴う「軍事文化」への人々の嫌悪があると伺った。

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