現代日本の中堅倫理学研究者の方々による大学学部生むけの倫理学の教科書。功利主義・義務論・徳倫理学という現代の英語圏の倫理学を中心にみられる規範倫理学の三分法を基本に、ニーチェやベルクソンなど「生の哲学」や日本倫理思想にもページがさかれている。分かりやすい事例から説き起こされ、平明な文章で書かれている。論述は全体に穏当であるように思われる。参考文献も挙げてあり親切。翻訳ものにはない分かりやすさがあり、教科書・参考書として優れた本であるように思う。
ただし、本書を読んでも伺うことが出来るが、現代の英米を中心とする倫理学は行為の究極目的を問わず、個々の行為の善さを問題するにとどまり、いわば「善い行為」を問いえても、「善き生」は問いえていないように思われる。それは実は同時に死の意義をいかに問うかという問題とも連関するが、この点に関しては倫理学ではなく、むしろ「死生学」にその役割が割り振られているようにも思われる。
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