2012年4月9日月曜日

Martin Rhonheimer,The Perspective of the Acting Person Essays in the Renewal of Thomistic Moral Philosophy,The Catholic University of America Press,2008.

マルティン・ローンハイマー(1950~)はドイツ生まれ、現在はローマの聖十字架大学(オプス・デイ)の倫理学者。トマス・アクィナスの自然法論研究や生命倫理学、家族倫理学、政治哲学関係の著作で知られる。
 ローンハイマーはトマスの自然法倫理学を徳倫理学として理解すべきことを主張する。本著作は彼の論文集。全体に難解で、正直なところ論述の繰り返しも多いように思う。
 特に印象に残った議論を本書から引用したい。規範倫理学説としての帰結主義に関して、「これは確かに合理性ではあるが、道徳的な意思決定の合理性ではない。それはむしろ制作(ポイエーシス)の合理性に属すると言ってよいもので、技術的な意思決定であり、より良き世界を『作ること』に関わるものである。」としている。つまり、行為の有徳さを問題にしない帰結主義は、実践(プラクシス)よりは制作(ポイエーシス)に関わる「技術主義」だというのである。帰結主義では技術により望ましい結果が惹起されればよしとされるわけで、結果を惹起するに至るまでに必要とされる行為者の有徳性は問題にならなくなってしまう、とローンハイマーは述べ、実践理性の賢慮の徳の意義を強調する。
 

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